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2021年6月29日

森にアドベンチャーパークをつくる

アドベンチャークリエーションチームメンバーによるコラムです。
writer: 窪田直樹
私たちがつくるエアリアル アドベンチャーは、天然木のない広場のようなところに丸太を建柱してつくる場合や森の中の天然木を使う場合があります。 どちらも素材やレイアウトを慎重に検討して素晴らしいアドベンチャーを体験できるように心がけています。

※エアリアルアドベンチャー=樹上のアクティビティ
※アドベンチャーパーク=エアリアルアドベンチャーやジップラインがあるアドベンチャー体験施設
今回は森や樹木のことについてPAJがエアリアル アドベンチャーをつくるうえで考えていることを中心に書いていきたいと思います。 まずはじめに、天然木を使う上で、当て木を使いワイヤーを巻いたり最小限の負担で済むような施工を心がけます。

森から樹木を貸してもらい、使わせてもらっていることを念頭に置いて、「樹木には負担をかけるけれど、子どもたちや利用する人たちに成長や学びの機会を与えるために使わせてくださいね」と心に留めて施工しています。
私たちが森にエアリアル アドベンチャーをつくるときは、以下のポイントを見て設置の可否の判断をしています。

●樹種
●樹木の状態
●全体の雰囲気

樹種について

エアリアル アドベンチャーでは広葉樹も針葉樹も使いますが、比較的条件が整っている針葉樹の森を使うことが多いです。 よく使う針葉樹には杉、檜(ひのき)、赤松などよく利用しています。これらの針葉樹は根茎図鑑などで調べると、垂下にのびる根は太く深く成長し、水平根も比較的太く広がり根茎の支持力は大きいとされています。

スリル満点のアドベンチャー体験をしてもらうため、樹木の高いところにデッキなどをつくるため、5m〜8m程度まで枝分かれがなく真っ直ぐな樹木となると、やはり針葉樹の森を使うケースが多くなります。

もちろんコナラやクヌギなどの広葉樹でも、そこに作るエアリアル アドベンチャーの条件に合えば使用する場合もあります。

日本の森林

日本の森林の4割が植林で、そのうち7割が杉、檜とも言われており、私たちが視察訪れる場所も比較的、針葉樹の森が多いです。
戦後の植林は、速く真っ直ぐに育つ杉、檜、松を中心に行われて、伐採して運び出すのに便利な場所に多く植林されていたそうです。

このため、針葉樹の森があるところは山深い、人を拒絶するような深部ではなく、川や道路に近い場所や昔の林道を使用した場所など、人の気配がする場所が多いようです。エアリアル アドベンチャー候補地もそんな針葉樹の森が多くなります。海外のアドベンチャーパークでもセコイヤやレッドシダーなどの針葉樹が多く活用されているのをWEBなどでも良く見かけます。

樹木を見る視点

エアリアル アドベンチャーに使用する樹木は健康でしっかり根を張り、比較的真っ直ぐに伸びている木が向いています。私達は主に以下の点に注意して観察しています。

●樹木の直径が胸高で30cm以上あるか
●真っ直ぐに伸びているか
●枝分かれしていないか
●うろなどできていないか
●害虫の被害はないか
●健康状態は良好か

健康状態については、最終的には樹木医などの専門家が見ないとわからないケースもあります。

全体の雰囲気を大切にする

現地視察の際は、どういうコンセプトのエアリアル アドベンチャーがいいのか、森や公園の雰囲気をどう生かすかを考えます。さらに、人が多く集まりそうな場所への導線を考慮したり、クライアントの希望する場所や利用者層を考慮しながら、デザイナーやビルダーと共にデザインイメージを膨らませていきます。
これに加えてパークの目玉となるような場所やシンボルツリーがあるかなども大切な要素です。

例えば、見事な枝ぶりの広葉樹があるのに枝分かれが多くアクティビティの設置には使用できない場合。
アクティビティには使えなくても、大きな木の魅力は夏に木陰を提供したり、ハンモックを吊るしたりと人を引きつける雰囲気があります。

アクティビティの設置だけではなく、その場のシンボルになるようなモノ(オーラのある木、大きな岩、小川、池etc)は見逃さないようにしています。

想像力を働かす

鬱蒼としている森でも人の手が入れば、陽が差し風が通り、明るく雰囲気が良くなることもあります。 逆に樹木が無く、ぽかんと空いてしまっているスペースでも、そこを受付や休憩場所など人が集まるスペースとして活用することもできます。

緩やかな斜面や起伏がある場所は、一見設置が困難なように見えますが、想像が膨らみます。エアリアル アドベンチャーのエレメントを進んでいるうちいつの間にか高度感のある場所にいた、というようなレイアウトも…!

森以外にも

森や樹の話をしてきましたが、私達は森にも広場にもエアリアル アドベンチャーをつくります。森があれば森を活用し、使ってよい樹木がない公園などでは人工柱(丸太)を活用します。
広場や公園などでも充分にアドベンチャーができるようデザインをしています。

最後に

この仕事についてからは、仕事以外でも登山や遊びで訪れた土地の森などを見るとなんとなく樹木の観察を始めて、そのうちに勝手に妄想を膨らませて自分のエアリアル アドベンチャーの構想を始めてしまいます(笑)
皆さんもご自身の土地や、近くに立派な木のある森がありましたらエアリアル アドベンチャーの妄想をしてみてはいかがでしょうか? 妄想の際は、是非お声がけください。一緒にエアリアル アドベンチャーを作りましょう。
参考資料:
・「生物多様性ビッグデータで日本全土の木本植物の個体数を推定」:国立研究開発法人国立環境研究所
生物・生態系環境研究センター生物多様性評価・予測研究室  特別研究員 深谷肇一
琉球大学理学部海洋自然科生物系  教授 久保田康裕
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20200514/20200514.html

・林野庁 https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html

・新装版樹木根系図説

・国立研究開発法人 森林研究・整備機構 http://www.ffpri.affrc.go.jp/index.html

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