覚悟を決める


writer: 髙野哲郎

物事に向き合う姿勢を、私は一遍の詩から学びました。

「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ」

この最後の一文によって、自分の背中を蹴飛ばされたような衝撃を受けたことを、今でもはっきりと覚えています。この詩は、茨木のり子さんの「自分の感受性ぐらい」です。

私がこの詩と出会ったのは、大学卒業後から勤めていた会社を退職したときのことでした。当時は「子どもの教育に携わりたい」という思いを抱きながらも、そのようなあてもなく、決まっていたことと言えばプロジェクトアドベンチャーの講習会を受講することだけでした。

状況としては、就職中にはなかった時間の過ごし方を選べる自由を得て、大きなチャンスです。しかしそのときの私は、心の中で「うまくいかなかったら、仕事内容にこだわらずに就職先を探そう」と、失敗したときのことをイメージし、自ら掴んだチャンスに真正面から向き合えていませんでした。

毎月の収入を手放し、生活の先行きが不透明になることを自ら選んだにも関わらずこのような心境だったのです。

そのときに出会ったのが、この詩でした。読み進める中で「自分の在り方を人のせいにするな。すべては自分次第だ」と詰め寄られ、前述の一文を読み私は覚悟を決めました。

「自らの手で自分の人生をつくる。そのためにも目の前のことに全身で挑む」と。これが、私にとって本当の意味で過去を手放し、未来に目を向けた瞬間だったと思います。

それからは、「子どもの教育に携われるようになるにはどうすればよいか」というシンプルな軸で物事を考えることができました。関連すると思われる場には、精力的に足を運びました。

自身の知識不足や経験不足を省みずチャレンジの機会を請い、幸運にも機会が得られた際には、周囲の方にサポートを受けながら試行錯誤を繰り返しました。うまくいかないときも多々ありましたが、そのことも素直に自分の糧にすることが出来ました。

目の前にチャンスが訪れた時に、喜びや期待を抱くと同時に、不安や緊張を感じる方もいるのではないのでしょうか。その時に、及び腰だったり斜に構えていては、自らの力も発揮できませんし、周囲の助けも得られません。逃げ道ばかりを考えていては勿体ありません。

そのチャンスを生かすには、真っ向から向き合う「覚悟を決める」ことが必要なのだと思います。私自身はいまでも判断に迷い、踏み出すことに躊躇することもあります。そのような時にこの詩を思い出し、自分自身が納得できる判断や行動を心がけています。

writer: 髙野哲郎