シエン・ノワール(Chien Noir、以下CN)社はネットを活用したアドベンチャー施設を世界中でデザイン、施工をしているフランス・グロア島の会社です。プロジェクトアドベンチャージャパン(PAJ)はCNと販売代理店契約を結び、日本でCNのネットアドベンチャー施設を販売しています。
2019年4月にオープンしたPAJが運営する「PANZA宮沢湖」にはCNがデザイン、施工した「FUNMOCK(ファンモック)」があります。PANZA宮沢湖に来ていたCNのデザイナーのシリル・ショヴォ(Cyril Chauvaud)さんに話をききました。
デザインの仕事
昔、パリの学校で彫刻の勉強をしていました。その後、デザインや建築の仕事をしながらデザインというものを現場で学んできました。
CNの前はマダガスカルに1年半いて、家の中のもの(テーブル、椅子、キッチン)などのデザインと映像の仕事をしていました。マダガスカルには良質の木がたくさんあるのでデザインをすることが楽しかったですね。
CNは弟のセドリックがつくった会社です。5年前にマダガスカルからフランスに帰国したときにシンガポールでのアドベンチャー施設のプロジェクトを手伝ってほしいと言われたのがきっかけでCNのメンバーになりました。
事前調査の重要性
当時、CNでは施設をつくる前の事前調査が十分ではありませんでした。徹底した事前調査をしないとよいデザインをすることが難しいので、私は事前調査にレーザーを使い始めました。レーザーを使った事前調査によってCNのコースは飛躍的に進化しました。
レーザーで高低差を的確に把握し、全体を捉えることができるようになりました。そのデータをコンピューターに取り込んでデザインします。事前調査に使用するレーザーは「トポグラフィック」といって建築用のレーザーです。ポイントをとって地形を計測し、コンピューター上に森を形成します。私たちがその方法を考え出し、現在私たちだけが使っています。
ものをつくるには「ファーストステップ(最初の段階)」がとても重要です。デザインの前の調査をどれだけ詰めて行なうかで、よいものができるかどうかが決まります。
デザインをイメージする
コースのデザインはひとつとして同じものはありません。事前調査でデザインをイメージするとき、私自身が「飛んでいる」感じがします。実際に森をみて、計測したデータをみて、その森を飛んでいるように眺めながらデザインをしていきます。
デザインをするとき、私は木のアルマ(スピリット)に耳を傾け、木々を感じます。立地上デザインが難しいとき、木々が解決策を教えてくれることがあります。自分がデザインしたというよりも木々があるべきものを教えてくれることがよくあります。
そういうとき、私は木のスピリットを感じているだけです。私の弟、セドリックは私たちのプロダクトを「ブット・アート」と言います。ブットはフランス語でロープの意味で、「ロープ・アート」です。私たちのプロダクトは「アート」なのです。
コースで使用するネットは全てフランスのグロア島で製作しています。ネットのどの部分をカットするかはとても複雑で難しい作業なのですが、現在はコンピューターで事前に計算をしています。コンピューターで計算をして、それを工場に渡して製作をしています。
CNのコースは、自然のちから、フィッシャーマンの漁網技術などの伝統技術、コンピューターなどの新しいテクノロジーを融合してつくられています。
世界にあるCNコース
今までに50くらいの施設をつくってきました。デザイナーはいま、私ひとりですが、コンピューターの画面を見ながら、みんなで解決策を考えたり、新しいデザインの形を模索しています。
現在、若いスタッフの一人が私についてデザインの仕事を学んでいます。事前調査からコンピューターをみてデザインすることを学んでいます。
デザイナーからのメッセージ
日本人はデザインを大切にしてくれていると思います。私たちは日本のコースのために小さな彫刻をコースに飾りました。太陽から降り注ぐ光分子をイメージしています。これはエネルギーの象徴です。フランスでは動物のオブジェを置くこともありますが、私のイメージの中で日本人は抽象的なものが好きなのではと思ったのです。
PANZA宮沢湖はとても狭く傾斜がある場所にあるので、一方通行ではなく、いろいろな方向からコースの中を回れるように工夫しました。進んで行くと別の方向に進めるようなっていることが特徴です。湖を見渡せる素晴らしいロケーションなので自由に楽しく遊んでほしいです。
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