一般財団法人富士通JAIMS
一般財団法人富士通JAIMS様で展開されているアジアのビジネスリーダーを育てる国際マネジメントプログラム(GLIK)では、2013年の開講当初より弊社のプログラムを導入いただいており、今年で7年目となります。3.5ヶ月を共に過ごすメンバーとの関係づくりを目的に、最初の2日間で研修を行なっております。
研修によるチームの関わりの変化を中心に担当の坂下大様(シニアマネージャー)、開講当初からプログラムに関わっている新實邦子様にお話を伺いました。
反対意見を言える環境づくり
導入いただいたきっかけは?
坂下様(以下敬称略):私たちのプログラム(GLIK、国際マネジメントプログラム)は野中郁次郎先生の考えに基づいてつくられています。野中先生が所属なさっている一橋大学院で行われているプログラムでも、チームビルディングとしてPAを使われているという話をきいて、一橋大学院のPAを見学にいきました。
お互いの名前も知らない中で始まるのに、あっという間に距離が縮んで、先生も参加者も非常に仲良くなっているのを見て、いいなと思いました。
PAを通して、チームがどんな風になっていって欲しいですか?
坂下:本音ベースでディスカッションして学びを深める関係をつくることが大切です。PAでは、体を動かして、一緒に何かやることで達成感があります。より心がつながった感じの中で、本音ベースで議論できると思っています。
しっかりと関係を築いたうえで、反対意見を遠慮なく言える環境をつくる必要があると感じていました。そういう関係づくりを期待してPAを導入しています。
実際にはどうですか?
坂下:3.5ヶ月のプログラムの最初にチームビルディングとしてPAを導入しています。PAのあとは、戦略についてかなりインタラクティブな授業があるのですが、みなさん、遠慮なく意見が言い合えている点では、非常に効果が出ているのではないかと思います。休み時間の会話、笑顔、距離感、姿勢などに変化を感じます。PAをすることでジャンプスタートになり、PAをベースに関係が深まって、3.5ヶ月の入り口に立つという感じです。
感覚に作用するもの
GLIKは多国籍プログラムですが、多様性、違いを認めるということについて、PAで学べることはありますか?
坂下:我々の育成しようとしているリーダーは、イノベーションを起こすリーダーです。イノベーションは、似たような人同士だと出てきません。
イノベーションは、突拍子もない発想から突拍子もないことが生まれてくるので、違う人の視点や考え、意見をうまく取り込んだところに自分の考えを足して、新しいアイデアをつくります。だから違う発想の人たちといかにうまくやるかということを、3.5ヶ月の冒頭にやることで、身を持って経験します。ここで経験したことは後々の授業の中で腑に落ちていきます。知識ではなく感覚、無意識のところにうまく作用してくれている気がします。
新實様(以下敬称略):PAでは多様性を学べると思います。体を動かしながら、本当にゴールを達成したいという気持ちが高まったときに、自分が剥き出しになります。そういう場面がPAだと起こりやすいです。剥き出しになると、違いが浮き彫りになりやすくなります。
チームの中には、違いを主張できない人も、主張しかできない人もいます。それが多国籍チームではより顕著です。活動を通して、主張できない人が、「主張しないと達成できないんだ」ということに気づく瞬間や、主張しかできなくて人の意見をきけない人が、「人の意見をきかないと達成できないんだ」と気づいたりします。その瞬間こそ真骨頂という感じがします。
自分の意見を言うこと
心に残っているシーンはどこですか?
坂下:「ニトロクロッシング」(A地点からB地点までロープを使って、誰も地面につかずに、全員が渡っていく活動)をやっていて、なかなか達成できない、時間もオーバーしているとき、ある参加者が「これ以上続けるの?」と声をあげました。
疑問を呈する仲間が出たことで、意見がぽろぽろ出てくるようになりました。本音を言っても大丈夫なんだと感じられる出来事だったのかなと思います。
あの状況では、勇気を出して意見を言うということが一番難しかったことだったので、意見が出たことで、またひとつ、チームのつながりができたように見えました。
歩踏み出す勇気
PAで起きたことがその後に個人やチームのあり方に影響することがありますか?
坂下:自分が一歩踏み出すことの葛藤を経験することによって、次に自分がリーダーになったときに、一歩踏み出せない気持ちがわかったり、そういう人が活躍してもらうためにはどう接したらいいかなどがわかるという部分がいいと思います。
体験したからこそわかることですね。
坂下:体験することによって、体を動かしながら学ぶので、よりいろいろ分かる気がします。体験すると、いろいろな五感を使うので、よりわかりやすいのかもしれません。心に残るインパクトが強い感じがします。
視点を共有する
弊社のコーディネーターの存在はどのようなものですか?
坂下:私は事前の打ち合わせも含めて、コーディネーターとのやりとりがとてもよい学びになっています。PAは理論ではない面が多いです。人の心や関係性という生のものを扱っているので、非常に勉強になります。
活動を見ているときにコーディネーターと話すと、自分が見ているものとコーディネーターが見ているものに違いや共通点があり、いろいろな学びが得られます。コーディネーターの言葉を通して、私自身が考えるきっかけになっています。プログラムでアクティビティを通して振り返るのと同じで、私自身も学びを得ています。そういうことがPAJという組織のカルチャーになっているのだと感じています。
イノベーションを起こす場としてのPA
PAをひと言でいうと何ですか?
新實:人を裸にする、剥き出しにする場所です。チームで最大の学びを得るためには、自分が裸になっても大丈夫という土壌、信頼があってこそだと思います。裸になるからこそ、違いが出てきて、違いがあるからこそ、そこをうまく生かしてイノベーションが起きると思っています。PAは、イノベーションを起こす最初の「裸になって学ぶ」というところを手助けしてくれる場ですね。
坂下:人の中に普段はないものを出してくれるところです。本人も気づいていない、普段は出てこないポテンシャルを出してくれる場を提供してくれます。
本人も意識していない側面があるんだということを、活動や振り返りを通して、本人が認識できます。「自分にはこういう面があるんだ」という発見があってこそ、ワンランクあがっていくことができます。
新實:ファシリテーターが一人ひとりにちゃんと試練を与えてくれて、試練を試練のまま終わらせないで、それぞれのやり方で乗り越えるところまで気を配ってくれます。