非常勤ファシリテーターのあっきー(木村彰宏)。NPOでの復興支援、学校の先生、児童発達支援、企業での採用担当、研修設計やWS開発、幼児教育アドバイザーなどさまざまな仕事をしているあっきーが目指す先とは。
PA(プロジェクトアドベンチャー)との出会い
僕のファーストキャリアは岩手県の復興支援のNPOでした。研修の一環で、NPOの理事にPAを紹介されました。当時、沿岸の子たちの遊びや学びの場への支援をしていたので、PAのマインドを取り入れるのは大事だと思い、学んで実践していました。
その後、「NPO法人Teach for Japan」から派遣されて学校の教師をする際も、赴任前の研修の中でPAを受けました。PAJ主催のワークショップを受けたのはその後になります。
PAJでは、エントリートレーニングを経て、今までに5回、プログラムのファシリテーターをしました。
ファシリテータープロセス(エントリートレーニング)を通って
PAJのファシリテーター研修制度では、ルーブリックのチェック項目が丁寧に細分化されているので、フィードバックがわかりやすくて、自分の課題を改善しやすかったです。僕の課題は「スポット(万が一のときに支えられる位置に立つ)にちゃんと入る」などテクニカルの部分が多かった気がします。
PAも含めて、学びの場というのは、参加する対象によって同じことをやっていても全く変化の仕方が違うので、面白いですね。
グループは、表出的にポジティブだからといって、本当にポジティブだとは限りません。参加者の層や年令も考えながら「この場の目的は何か?」ということに立ち返りながら、一人ひとりの変容に伴走していくのは楽しいです。
PAJのプログラムで難しかったのは、事前の情報の少なさもあって、プログラム依頼者のニーズが曖昧だったり、依頼者がゴールをイメージしきれていないときに、どこにゴールをおいてやっていけばいいのかという点です。依頼者と参加者とファシリテーターの連携や擦り合せは難しいと思いました。
あとはPAをやりに来ているのに、依頼者の教育観や価値観がトップダウンだったり、依頼者がプログラムに介入してくるケースもあります。そういうときは、そっと見守っておいてあげたらいいのに…と思います。
自然に起きていることを見守る
周りの大人からの介入があったときも、ニコニコ見ています。それも含めてその場かなと思っているので。起きていることとして受け取っていきます。
一方で僕はファシリテーターですが、ここは、と割り切ったところではすごく応援しちゃいます。一回、トレーニングでグループを担当したときに「がんばれ、がんばれー!」と叫んだことがありました。そのときは、あれはあれでよかったのでは、とPAJトレーナーにも言ってもらえました。
本来、ファシリテーターとして、強くどちらかに寄るような介入はよくないと思っていますが、その場面では、シンプルにその子達が頑張っていることを応援したいと思いました。
真ん中にいる
僕の中には「全ての人が」「どの人にとっても」という言葉が強くあります。だからフラットでいたいと思います。どっちかに寄ってしまった瞬間に、見えなくなってしまうものがあります。僕が右と言えば、右じゃない人が見えなくなってしまう。そういう難しさや構図があるので、なるべく真ん中にいたいと思います。
真ん中にいるためには、自分が理解できるコンテクスト(文脈)を増やすことが大切です。平田オリザさんが「自分の中にいろいろな文脈を増やしていく」と言いますが、想像しきるのには限界があります。知識が限定的になったときに、どうしても無意識のうちに排除してしまったり、どちらかに寄ってしまうことがあります。なので、多くの方のさまざまな文脈みたいなものをなるべく深く知りたいと思います。
そしてもうひとつは「きくこと」ですね。でも、きくに徹するのはちがうなとも思うんです。ききながら、相手から引き出していくことなのかなと思います。
僕はいま、毎日常に誰かと会ったり話したりしています。それが文脈を増やすことにつながっていると思います。あとは保留することを大切にしています。決めつけずに保留することを心がけていますが、なかなか難しいですね…。
一人ひとりの変容の機会を
小中学生のとき、さまざまな家庭事情を持ついろんな子がいる地域に住んでいました。そんな中で、僕はやんちゃな子たちともそうではない子とも仲が良かったんです。微妙なポジションで生徒会をしていました。
そんな中で、学校という場所がなぜこんなに人によって居心地が違うんだろう、なんであいつは人を殴ったり、遅刻しちゃったりするのだろう、なんでこんなに勉強できないんだろうといろいろなことに違和感を持っていたのがスタートにあります。それはその子達が抱えていた「社会課題」だったということが後にわかりました。
信じていることは「絶対に人は変わっていく」ということです。人はそのタイミングでたまたまその人に合わない発達段階や組織の中で挫折して、自分の中の価値を感じられなかったり、社会に居場所をなくしてしまいます。そうということは許せないんです。だからそれをどうにかしたいという思いがずっとあります。
自分自身も変化を
みんなが「その人にとってよりよくなることを応援したい」という想いから、変わりたいと思っているところを支える仕事をしたいと考えていますが、そればっかりやっているとしんどくもなります。自分のためにももっと何かを、と思うんですけど、そこにはまだ蓋をしている自分がいます。
ファシリテーターとしては、参加した人それぞれにとった気づきを起こせる存在になりたいと思います。「誰かにとってはすごい気づきが大きかったけど、誰かにとってはなかった」よりは、一人ひとりにとってその人にとっての気づきが起こせるような存在でありたいと思います。
ファシリテーターをやるのは楽しいです。PAのマインドを大切にできるような学びの場をつくれる人を増やしたいという想いが一番にあるので、これからも教師教育に関わったり、場をつくれる人を増やしたりと、活動していきたいです。
(20190912)
PAストーリーズTOPへ戻る