前編では学生の皆さんたちのPAプログラム体験を語ってもらいました。後編では、その体験の場を提供した先生方がどのような意図を持っているのかを伺いました。
人間的な成長を目指して
ーーなぜPAプログラムを導入したのですか?
吉野先生(以下敬称略):
学生たちに人間的な成長を促すプログラムが必要だということで、PAを最初に体験させるのがいいのではと思いがあり、学部の必修として全員が体験することにしました。
世の中ではチームとして活動することが求められています。PAなら人間的な成長とチームビルディングが一石二鳥でできるので、従来のオリエンテーションキャンプから、チームビルディング研修(PA)へと変わりました。
ーー実際にご覧になっていかがでしたか。
吉野:
予想通りの効果は得られていると思いますが、当初の予定では宿泊でしたが、今回はコロナウィルス感染拡大の影響で通いプログラム(2日間の実施・1日校内、1日ロープスコース)なのが残念です。
PAプログラムは効果的で、学生が生き生きしていました。ただ私としてはPAの中ではきちんとできることが、大学の日常生活の中でできないケースもあるので、そこは今後の課題だと思っています。積極的な発言や行動が大学生活でもできるように、PAの成果をいかに大学生活に結びつけるかが大切だと思います。
大学生活へのチューニング
ーー学生たちの2日間の学びは何だったと思いますか?
鈴木先生(以下敬称略):
PAを導入する前は部活ごとに固まる傾向がありました。PAプログラムになってからは、部活ごとに固まらないで、完全にミックスされました。
去年はコロナウィルス感染拡大の影響で秋に実施したので、すでに部活で固まっていました。今年は部活で固まる前にPAができたのはよかったですし、友達も増えたと思います。授業でもペアやグループを組むときに、部活を越えて組めるようになりました。
一昨年はPAプログラムが楽しすぎて、「大学=楽しいところ」となってしまい、授業を受けにくる場所になりにくい部分がありました。昨年から今年のプログラムでは「大学は学問を追求する場所である」ということをわかってもらいたいということを事前にPAJに依頼していました。
ーー今回のプログラムの中で、どのような部分が「大学は学問を追求する場所」というメッセージにつながっていたと思いますか?
鈴木:
ファシリテーターのみなさんが言葉かけを工夫してくれていると感じました。「どうすればうまくいくか」を考えられるような問いかけが多かったですね。
青木(PAJコーディネーター):
体験をそのままにしてしまってはそのまま終わりになってしまいます。それを自分ごとに置き換えることが必要で、それを僕たちは「一般化」と呼んでいます。
起こったことを振り返って、それが何なのかということを自分に置き換えて考える。それを転移させていくと、授業などに生きたり、先生が話していることと自分の体験がつながっていきます。その辺りを意識しながら、体験学習のサイクルに則ってファシリテーションしています。
動くこと、考えること
ーー学生さんが「”動く+動く”はしたことがあったけれど、”動く+書く、動いて考える”はしたことがなかった」と言っていました。体の他に頭も動く時間だったようです。
狐塚先生(以下敬称略):
部活動でもそうですが、ただ動いているだけではダメなんです。いかに自分の中で分析して、仮説化して、次の練習につなげるかですよね。
体を動かすのは好きだけど、考えるのが苦手な学生も多いので、動く、考えるのトレーニングをしていきたいと思っています。
部活では練習をやらされてきた子が多いと思いますが、それだと向上しません。いかに自分の中に課題を持って取り組んでいくかを考えないとチームは強くならないんです。
本学では教職やスポーツ指導者を目指している学生もいます。単にそのスポーツができるようになるのではなくて、指導できるようになったり、指導者として考えさせるということを学部で学んでほしいと思います。
思考の基礎としてPAなどの活動をしながら自分の中で課題として考えるということができてくるといいと思いますね。
ーー今回のPAの2日間でそれができたと思いますか?
狐塚:
きっかけづくりとしてはよかったと思います。それが本当に日常化、一般化できるかというところはもっともっとトレーニングを積んでいかないといけないと思います。
活動してふりかえってみる経験や、グループの中でシェアする経験をどこか思い出してくれたときに、部活の中や授業で生きてくるといいなと思います。
2年生からは専門実技の授業でPAがあり、1年生で体験したPAをベースにハイエレメントなどの自己への挑戦をします。そこでどんな変化があるのか楽しみです。
目標を設定する経験
ーー同じ活動を目標を変えて何度もやったのが印象的だったと言っている学生さんがいました。
狐塚:
目標設定は自分の中でも、チームの中でも大切です。そこではやることの意味をどう見つけるかということが大切になってきます。
一つひとつの課題の意味づけをしたり、それが授業ではどういう意義があるのか、自分にとってどういう意義があるのかという意味づけをしていくことが大切ですね。
その都度、振り返りながら自分の課題意識を変えてやっていくというのが、ある意味の粘り強さになっていきます。
吉野:
スポーツの学部だからといってスポーツの競技力向上につながるようなプログラムというのは逆に必要ないと思っています。
スポーツに関することは副次的には、自分の体験を他のものに置き換えて、これは部活で使える、こういう風にやれば部活がうまくいくと考えるきっかけになりますが、それはメインではないんですね。大切なのは人間力の向上と学ぶ姿勢です。
PAの魅力
ーー先生方が感じられる、PAのよさは何ですか?
鈴木:
教員が感じている学生の足りない部分をお伝えすると、そこに対応してくれようとするのがよかったなと思います。いまの困りやどういう学生を育てたいかということをベースにプログラムを考えてくれたので助かりました。
吉野:
PAでは人間関係が構築できますね。場づくりに関連しますが、自分が安心していられる場所ということだと思います。そして少なからず人間力はアップしていると思います。
狐塚:
PAプログラムでは、ゼミ単位で活動しました。ゼミの人間関係づくり、友達づくりをするという点では、非常に成功したと思います。私たちの主眼点もそこにありました。
そしていまはそれを日常化したり、授業に生かしていくということに視点が移っています。それは人間関係づくりの部分ができているからだと思います。
大学もアクティブ・ラーニングをどんどん取り入れていかなければなりません。学生が主体的にアクティブ・ラーナーとして動けなければならない。PAではその下地づくりができると思います。
(20210520)