ティール組織、自律分散型、フラットな組織…など、一人ひとりが働きやすく、且つパフォーマンスを出していける組織への関心はこの数年、どんどん伸びています。「理想はわかるけれど、リーダーがいないと誰がいつ何を決めるかわからない」「フラットだと誰が決済するのか」「フラットとは言っても給与を決める際に上が決める」など、現実的な問題もあります。
PAJではこの数年、一人ひとりが自律した状態でチームで働いていける組織づくりを進めています。PAJでは会計データも含めて、クラウドで共有しているデータの全てを正社員全員が見られるようにして、一人ひとりがオーナーシップを持つ取り組みをしています。昨年は「自分の年俸を自分で決める」ことにも挑戦しました。紆余曲折の中、決まった年俸決定プロセスでしたが、いくつかの問題点が出てきて、今年も年俸を決める方法を変えるミーティングを続けています。実際の飛び入り参加はありませんが、一連のミーティングも誰でも参加できるようになっています。
私達が向かっている先は、どこなのか。その先をみんなが同じように見つめているのか。いろいろなことは見えないままですが、2020年4月からの年俸について、新たなプロセスが始まりました。
自分で決めるは理想的?
PAJでは、年俸をほぼ年功序列で決める期間が長かったのですが、ちゃっきー(茶木知孝)がPAJの取締役になってからのこの数年間は、MBOを元に上長と本人が年俸を決めていました。上長がその人を真に評価できるのか、そもそも他者評価による年俸に意味はあるのかなどを考える中、昨年(2019年)は初めて「自分の年俸を自分で決める」に挑戦した年でした。
①年俸と次年度の期待成果についての自己申告→②360度フィードバックで金額の妥当性をスタッフ全員で相互評価→③評価をもとに本人が「最終自己申告」→年俸決定という方法をとりました。
「自分で決める」は理想的のようにも思えましたが、実際にはいろいろなことが浮かび上がりました。
一番大きかったのは、全体の給与額が前年比106%アップしたこと。このままのペースで給与が上っていくと組織として成立していきません。今回、もし「自分で決める」を継続しても、そこに組織全体として天井を決めることも必要かもしれない、天井を決めるなら「自分で決める」ことにならないのではないかという意見がでました。
また、「次年度への期待成果」をベースにした申告額のため、今年度の実績は問われないため、「やる気がある!」=「期待成果(給与額)を高くする」となる面もありました。みんなからのフィードバックを無視して申告することもできます。
「自分で決めた」から一人ひとりに納得感があるかと思いきや、全ての数字が見えるだけに、あの人は〇〇円…という相対的なことが気になる場面もあったようです。理想的なように思えた「自分で決める」方法はひとまず、1年で終わることになりました。
全社数字を年俸に反映する
今回の年俸プロセスの変更をする中で、外せないものとして以下の3つがありました。
①自分で決める要素
②経営の状況を反映できる仕組み
③他者からのフィードバックがある程度強制力を持つこと
自分で決めるだけではなく、他者の声も反映され、なおかつ経営し続けられる仕組みであること。さまざまな話し合いの末、「今期の経常利益をもとに、給与の前年比率を決める」ことになりました。経常利益率が前年比10%以上なら、全員の年俸が前年比102%アップ。マイナス5%以下なら年俸は前年比98%になります。(詳細は年俸マンガ②参照)
増額希望を自己申告
経常利益率に合わせた社員全員の一律の増減の他に、今期の成果による増額希望に応えるために、増額希望申請ができることにしました。
増額希望者は今期の成果と金額を申請して、全社からのフィードバックを受ける方式です。
増額希望申請後、増額希望者リストを公開し、全社で匿名の10段階及びフリーコメントを書く。なるべく参加が望ましいですが、10段階・フリーコメント共に書かないことも選べます。
フィードバックの平均数値が6以上の場合、増額します。(平均6なら、申告額の60%、7.5なら75%)
フィードバックの平均6未満と、フィードバックしてくれた人が全社で8名未満の場合は増額しません。フィードバックが集まらない=貢献が認知されていないとするからです。
この方法、果たしてうまくいくのでしょうか?!どんなに一生懸命考えても、新しい方法には粗があったり、とんでもない落とし穴があります。実際にやってみないと見えてこないこともありますが、大事な年俸というものを決めるので、大切に扱っていきたいという思いから、ここまでの情報を元に、各チームミーティングでの説明会&意見交換会を開きました。